先日、元プロ野球選手の清原和博容疑者が覚せい剤取締法違反の疑いで現行犯逮捕されました。
清原容疑者は私にとって少年時代のスーパーヒーローであり、大好きな選手の一人でした。
高校時代は野球部に所属し、野球をこよなく愛する私としてはその逮捕はあまりにも衝撃的過ぎて言葉には表せないほどのショックを受けています。
連日、ネットニュースなどでその逮捕についてたくさんの方がコメントされていますが、どうも「覚せい剤」と「麻薬」をごっちゃにされている方が多いようです。
覚せい剤と麻薬は全く別物です。
法律も異なります。
「覚せい剤」は「覚せい剤取締法」という法律で規制され、対象薬は「アンフェタミン」と「メタンフェタミン」という2種類の薬物です。
一方、「麻薬」は「麻薬及び向精神薬取締法」という法律で規制され、対象薬は「モルヒネ」、「コカイン」、「ヘロイン」、「MDMA」などの薬物です。
また、いずれも快楽を起こさせる薬物ではありますが、その機序は「覚せい剤」といわゆる「麻薬」では大きく異なります。
そして、依存性の強さも異なるため、全く別物なのです。
私が以前いた研究室では、こうした依存性薬物の依存を起こすメカニズムについて研究していましたが、覚せい剤はたった一回の投与でもマウスの脳内のタンパク質の構造を大きく変えてしまいます。
また、慢性的に投与した動物の脳ではかなりの変性が認められ、その昔に啓蒙された「覚せい剤やめますか?それとも人間やめますか?」というキャッチコピーは本当だったんだ!ととても驚いたことを覚えています。
覚せい剤は他の依存性薬物とは異なり、「フラッシュバック」を起こす率も高いです。
つまり、薬物を止めた後でも、なんらかの拍子で(例えば飲酒や光などの刺激でも)また再燃してしまう可能性が非常に高いということです。
覚せい剤を使用していた年数や頻度にもよりますが、覚せい剤使用者の再犯率が高いのはそのためです。
また、非常に厄介なことに覚せい剤の場合は、「覚せい剤精神病」と言われる「幻覚」、「妄想」といった精神病(今では統合失調症と呼びますが)に似たような症状を引き起こし、これが攻撃性をはらむため、傷害事件などを起こすこともあることが社会的にも問題となります。
依存性薬物が自身の問題だけで収まればいいのですが、このように他者を巻き込んでしまう可能性が高いことが問題です(昨今では危険ドラッグもその類に入りますが)。
清原容疑者がどのくらい常用していたかはわかりませんが、私は再犯の可能性が非常に高いと思っています。
まだ未成年のお子さんが二人もいるので、そのお子さん達のことを思うと気の毒でなりません。
二人は背負わなくてもいい重荷を背負ってこれからの人生を生きて行くことになりますが、どうかこの父親を反面教師に幸せな人生を送ってもらいたいと心から思います。
2016年2月5日 10:23 PM|
カテゴリー:色々なお話, 薬・医療のこと